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帯状疱疹

帯状疱疹とは

帯状疱疹は水ぼうそうを起こす「水痘・帯状疱疹ウイルス」を原因とする病気です。過去にかかった水ぼうそうのウイルスが、何十年と神経に内に潜んで、ある日突然、再び活性化して発症します。赤いプツプツとした数多くの発疹や水疱などの疱疹が、帯状に出現することが多いため、そのように呼ばれます。

帯状疱疹は決して珍しい病気ではありません。50代に差し掛かると一気に発症率が上昇し、80歳までに3人に1人が発症するといわれるほど、きわめて身近な病気です。

発症後3日以内に適切な治療を受ければ、ほぼ1ヶ月前後で治ってしまう治療可能な病気ではありますが、その一方で、年配の方が発症した場合や皮疹が派手な場合、いつまでも辛い痛みに悩まされてしまうことも多いです。

当院では、帯状疱疹の治療と予防ワクチン投与をしています。帯状疱疹の症状や経過、治療法を知り、発症率が高くなる年齢に差し掛かったら、帯状疱疹ワクチンを受けることを推奨しています。

帯状疱疹の症状

帯状疱疹は皮膚に症状が出る前に、患部に前駆痛といわれる痛みや違和感などがみられることが多いです。

症状の前触れと移り変わり

症状がでるのは体の左右どちらか片側に限られています。

  1. 痛みや違和感が一週間ほど続く
  2. 虫刺されのような発疹ができて水ぶくれになる
  3. 透明色の水ぶくれが、やがて黄色いうみの溜まった膿疱に変わる
  4. 膿疱がやぶれて、ただれや潰瘍になる

発疹が出ている間は、ヒリヒリ、ズキズキとした激しい痛みが起こります。皮膚症状が改善するとともに、痛みもとれることが多いです。しかし、なかには痛みだけが残る場合もあります。(帯状疱疹後神経痛)

帯状疱疹の原因

帯状疱疹は他人からウイルスをうつされて発症する感染症ではなく、自身の体に潜んでいる水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus;VZV)が再び暴れることによって引き起こされます。

水痘とは、子どもの病気として知られる水ぼうそうのことです。この水痘・帯状疱疹ウイルスは非常に感染力が強く、保育園・幼稚園で広がり、9歳頃までにはほとんどのお子さんが水ぼうそうにかかるといわれています。

水痘・帯状疱疹ウイルスの感染力は強いですが、子どもの水ぼうそうは安静にしていれば、1週間ほどで自然に治ってしまいます。これは私たちの体に備わっている「免疫」のはたらきによるものです。しかし、このウイルスに一度感染すると、体の中の神経節とよばれる場所にウイルスが隠れて棲み続けるのです。

帯状疱疹を発症するきっかけ

神経節に潜んだ水痘・帯状疱疹ウイルスは、人の免疫システムに抑え込まれながらも、実際は息を吹き返すとき(再活性化)を狙っています。そのきっかけとなる状況がいくつかあげられます。

  • 過度な疲労やストレスが溜まったとき
  • 加齢によって体力や抵抗力が衰えてきたとき
  • 糖尿病やがんなどの病気を発病したとき

いずれも人の免疫機能が低下するタイミングです。この間隙をついて、ウイルスは再び息を吹き起こします。

再活性化したウイルスは感覚神経の神経節から出て、神経を逆行して体表に向かって移動していきます。ウイルスは数を急増させながら、神経細胞とその周辺の細胞を傷つけ、結果的に炎症による痛みを感じるようになります。

帯状疱疹の合併症・後遺症

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹の後遺症として痛みが残り続ける病態を帯状疱疹後神経痛といいます。通常、帯状疱疹の痛みは炎症によって起こるものですが、この帯状疱疹後神経痛は神経がダメージを受けてしまうことで起こる痛みです。

ヒリヒリ・ズキズキとした痛みが特徴的な帯状疱疹とは異なり、帯状疱疹後神経痛はうずくような痛みが特徴的で、治り難くしつこく痛みが長引きます。帯状疱疹の発症後3か月以上にわたって痛みが続くようであれば、帯状疱疹後神経痛の状態になっている可能性が高いです。

眼の帯状疱疹(角膜炎・ぶどう膜炎)

帯状疱疹は眼に合併症を引き起こすこともあります。角膜(黒目の部分)に炎症が生じる角膜炎や、角膜の周りの茶目の部分に炎症が生じるぶどう膜炎が代表的です。

少しでも眼に痛みなどの異常を感じたときは、すぐに眼科を受診して、適切な治療を受けることが大切です。ごく稀に失明することがあり、注意が必要です。

耳の帯状疱疹(ラムゼイハント症候群)

耳周囲の帯状疱疹をラムゼイハント症候群と言います。耳の症状がある方の眼を閉じるのが困難になったり、口角が下がったり、ヨダレが垂れたり、喋りにくくなってしまったりすることがあります。さらに、耳鳴りや難聴を併発するケースもあります。(顔面神経麻痺、内耳神経障害)

帯状疱疹の治療

帯状疱疹の治療は経口薬で行います。水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬と、帯状疱疹の痛みを抑える消炎鎮痛薬が主軸です。まず急性期では抗ウイルス薬の投与を開始し、痛みが強いようであれば消炎鎮痛薬が処方されます。

上記の治療をしても痛みがとりきれない場合があります。その際は薬物治療の強化を行って生活に支障がないように痛みをコントロールすることが大切です。痛みがひどい場合は痛み専門のクリニックに紹介になることもあります。

帯状疱疹の予防にワクチンを

帯状疱疹は誰もが発症する可能性がある病気です。発症しても、自然によくなることが多い病気ですが、帯状疱疹後神経痛に移行してしまうと、長きにわたって強い痛みが付きまとい、その後遺症に悩まされてしまうケースも少なくありません。

帯状疱疹を発症させないことが何よりも大切です。現代では帯状疱疹を予防するワクチンが実用化されています。特に発症リスクが高まる50歳以上の方には、帯状疱疹の予防接種を推奨します。